春のお魚

おさかな辞典(春のおさかな)

アイナメ(春)

一年中味がよく、肉は白身で淡泊です。照り焼やレモンを添えて唐揚げに。

日本各地の沿岸の岩礁地帯にすみ、体長は40cm位になる。
うろこは細かく体色は濃淡の複雑なまだら模様で黄色、茶褐色が普通だが変異に富んでいる。
10~12月に浅海にきて、海藻に卵を生みつけ、卵がかえるまで雄が護るので、このころ浅所の藻場(砂底)では雄ばかり釣れる。 (雄は黄色、雌は茶褐色、一般的な見分け方)。 釣りの対象魚として親しまれている。
肉は白身で柔らかく淡泊そうだが、意外と脂肪が多く、市場には活魚として入荷することもあり、ほぼ通年にわたり利用される魚。 味は1年中あまり変わらないといわれているが、旬は春から初夏、ことに、春先のものが美味。

鮮度のよいものは、刺身、アライなどして生食にするが、いたみやすいので手早く処理する。三枚におろして皮を引き、さっと湯に通してすぐ水氷につけ、薄いそぎ切りにする湯あらいなどもよい。洋風にあっさりしたレモン風味でフライやから揚げにしても旨い。

◆アイナメの煮付け
(1) アイナメはワタをとりきれいに洗い、表になるほうに斜めに1~2本切り目を入れる。
(2) 底が平らな鍋に水、酒、砂糖、醤油、みりんを適量入れて煮立て、水でぬらした落としぶたをして強火にかける。煮立ったら中火にし、時々煮汁をかけながら15~20分煮る。 
(3) 器に魚を盛り、煮汁を少しかける。


アカムツ(ノドグロ)(春)

新潟ではノドグロと呼ばれる日本海を代表する魚のひとつ。脂がのっていて塩焼き・刺身が最高。

アカムツといってもムツではなくスズキ科。
口内が黒いことから、ノドグロとも呼ばれる。
最近、巷ではノドグロという呼名の方が一般的かも。
暖海性の魚で太平洋では東京以南、日本海では新潟以南に多く分布。水深100~200mくらいの深海に生息し、冬の産卵期には、やや浅い所へ移動する。 
幼魚は岸近くに見られ、20cm位までは沿岸の定置網にも入る。 歯が鋭く魚食性が強い、イカ類、小魚などを食べる。
全長30センくらい、背の方が赤く腹部にかけて薄く銀白色に変わる。近縁種のクロムツはやや小型で、うろこが小さく数が多い。 名の通り表皮が黒く、分布、生態はムツとよく似ている。

「寒ムツ」と呼ばれるように、旬は冬から春先。 白身の肉質は脂質が多く、栄養価も高い。 新鮮なものは刺身にもできるが、一般には、塩焼き、味噌漬けなど焼物にして食べる、鍋物など煮つけにしても良し。
小さいものは、うろこ、ワタをとり姿のまま塩焼きに、大きめのものは3枚におろし味噌漬に、冷蔵庫で2~3日おいて焼いて食べる。
脂がたっぷりのっているため焼き魚としては最高の贅沢品。


イイダコ(春)

ビタミンB1が豊富で、煮つけは、じっくりと含ませ煮にするのがコツです。


イワシ(春)

栄養価が高い魚のひとつ。焼きたてに大根おろしを添えてどうぞ。

(写真)左からマイワシ・ウルメ・カタクチ

マイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの総称。
日本と朝鮮半島を回遊するもっとも重要な水産資源だが、最近では漁獲量が激減し、特に形の良い大羽イワシは高値で取引される。日本海側ではおもにまき網で獲られるが、その量は年々減っている。以前は新潟沖でも流し網などで形の良い大羽イワシが獲れた。樺太から日本各地の沿岸、朝鮮を経て東シナ海まで分布する。ウルメイワシは南日本に多く、分布は東北まで。イワシ類(おもにカタクチ)の幼魚がシラスで、引き網でとられる。
マイワシ…体側に黒点が並ぶ。 全長25cm位に達するが、大きさによって大羽(おおば)、中羽(ちゅうば)などと呼び分ける。
ウルメイワシ…体の側面が円形に近い。 外洋性で産卵期だけ内湾に入る。 旬に目がうるんだようになる。30cm位。
カタクチイワシ…口が大きく、下あごが上あごより短い。 全長25cmに達し、カツオ釣りの餌としても重要。
キビナゴ…千葉から南日本に分布。 外洋性で4~8月に大群で接岸し海藻などに産卵。 ウルメイワシ科で全長10cm位。

脂質含量は季節により大きく変動し、産卵直後の5月頃が最低になり、秋に高くなる、この頃が旬である。ウルメイワシ、カタクチイワシは冬に脂質含量が高い。イワシ類の脂質は、酸敗、油焼けを起こしやすく、風味も速く落ちる、また、加熱時には特有の魚臭を生ずるので、加工原料にされることが多い。
干物としては丸干し、目刺しのほかカタクチイワシのしらす干し、たたみいわし、田作り、煮干しなどが、缶詰めでは、アンチョビーが有名である。栄養価はすこぶる高い食品といえる。

●イワシの手開き
(1) イワシはうろこをこそげ取り、胸びれの下から包丁を入れて頭を切り落とし、腹に切り目を入れて包丁の刃先でわたをかき出す。
(2) 水で洗って水けを良く切り、魚を左の手のひらに、尾を向こう側、腹を上にして持ち、右手の親指の腹を中骨の片側に当てて、そのまま尾に向けてすべらせ、身を開く。 
(3) 中骨を尾のつけ根で折り、手前に向かって身からはがし取る。イワシは身が柔らかく骨離れがよいので、手で簡単におろせる。この方法をマスターしておくと便利。

◆イワシの塩焼き
塩をふって強火の遠火で手早く焼き、あつあつをたっぷりの大根おろしで食べる。 脂質が多いようなら、10%の塩水に少しつけてから焼く。
◆イワシの団子汁
身は包丁でたたいて味噌、生姜汁などを加えて団子にし、汁の実に。 中骨はさっと焼いて、昆布ともに水から入れてだしをとる。


ウマズラ(春)

新鮮なものは薄造りで刺身に。手軽に煮魚・鍋物・干物などに。

北海道以南の日本各地、朝鮮南部に分布。日本各地にすむカワハキ科の魚。同科のカワハギより眼から口端までが長いのでウマズラの名がある。ウマハゲ・ナガハゲとも呼ばれる。
カワハギと同程度の大きさだが、体色はやや青味を帯びる。
全長30センチになり、カワハギより深い所にすみ、群泳する。産卵期は6~7月。カワハギよりも市場価格は低いが、近年、各地の引き網、定置網などに大量に入るようになり市場に多く出まわり、安定した価格で推移している。

肉質はよくしまっているがカワハギより味が落ち、特有のにおいがある。味醂干しなど、多くは干物に加工されるが、身離れの良い肉質なので煮付け、ちり鍋、みそ汁などにも合う。
また白身肉で、脂質含量は低く栄養価は今ひとつであるが、肝臓には脂がたまり、鮮度が良ければ、ポン酢醤油で生食すると美味である。煮つける場合は皮を除いてぶつ切りにし、肝臓もいっしょにさっと熱湯に通して水から煮る。少し苦味があるので、仕上がりにみりんを少量入れるとよい。旬は2~5月。


カナガシラ(春)

姿はホウボウに似ているが身質が異なる。刺身ではなく塩焼きや味噌汁が美味。

北海道南部から本州各地の沿岸に広く分布。
ホウボウによく似ているが、鱗が大きく体表がざらざらしている。 こちらは、ホウボウと違い刺身にはしない、塩焼き・わん種など火を通して食べるのが普通。
特にみそ汁にすると出汁がよく出て美味い。


カツオ(春)

強火にかざしてから、たたきにします。薬味には相性のよいおろし生姜を。

暖流系の回遊魚。日本海では水揚げはない。日本近海には黒潮に乗って近づき、鹿児島では春、関東では初夏、三陸では盛夏に獲れる。いちばん脂がのるのが三陸沖で取れる頃とされる。水深0~100m位の間を回遊。生きたカタクチイワシをまき餌にし、散水しながら擬耳鉤(ぎじばり)で釣る一本釣りは、豪快。巻き網でもとる。

肉は血合部分が多く、暗赤色。エキス分がひじょうに多いので、昔からカツオ節の原料として使われてきた。旬は、適度に脂ののった夏頃、秋口にとれるものも”戻り鰹”といいなかなか脂がのり旨い。刺身、たたきが最高。

水分が多く身が柔らかいので、強火にさっとかざして焼き目をつける焼き霜作りやたたきにするとよい。焼くことによって香ばしい香りが立ち、生臭みも消える。切るときはやや厚めに切るとよい。
薬味は、しょうが、ねぎ、青じそ、みょうがなどをみじんに刻み、さらして水気をきり、混ぜ合わせておく。

◆かつおのたたき
(1) 作取りしたカツオは金串4~5本を末広に打ち、強火で、表面から2~3mmの部分が色が変わる程度にさっと焼き、すぐ氷水に入れて冷やす。
(2) (1)をまな板にのせて塩とかんきつ類の汁各少量をふり、包丁の腹でピタピタとたたく。これを幅1cmに切る。
(3) 醤油、米酢、かんきつ類の搾り汁、みりんを混ぜ合わせる。
(4) 器に(2)を盛ってたっぷりのつまと薬味、(3)を添える。


クチボソ(マガレイ)(春~秋)

淡泊な味で、甘辛く煮つけるのが一番。また、酒蒸しや唐揚げにもどうぞ。

日本各地、千島、樺太、朝鮮、中国に産するが、主に北の方に多く、底引網などで漁獲される。体は楕円形で左ヒラメの右カレイと云われる通り、右側に両目が接近してある。
口は小さく左右不相称でいわゆる顎の方が発達している。
体のウロコは小さく、身卸しをする場合は、まず最初に丁寧に取る。沿岸の砂底にすみ、海底の小動物を捕食する。産卵期は春で、浮遊卵を産む。

新潟ではクチボソ、マコと呼ばれ低引網で一年中漁獲される。秋から冬にかけて身が厚くなり、クセのない身質は、姿のまま、煮ても焼いても揚げ物にしてもおいしく食べられる。

煮つけにするときは細かいウロコを出刃でこそげ、むめりも取って頭を落し、腹わたを抜く。
その時、血合いもいっしょに取り、水洗いし、水気をふいて切身にする。
さっと霜降りにして臭みを除き、水気をふき、煮立てた煮汁に重ならないように並べ、落しぶたをして煮る。
汁をときどきすくいかけながら、煮汁がとろりとするまで煮る。器に盛り、針しょうがを天盛りにする。


サユリ(春)

刺身が一番。あっさりした身は椀種・天ぷら・一夜干などに。

やや赤味をさし、細長く伸びた下あごが特徴。ハリウオ、クチナガ、ヤマキリなどと呼ぶ地方もある。各地の沿岸にすむが、南日本に多く、内湾、河口を群泳し、岸のすぐそばまで寄ってくる。春から夏に藻場で産卵する。背が銀青色、腹部が青白く透明で、体長は40cm位になる。

味は上品で、肉質もよくしまり、淡白な中にうっすらと脂ものっていて美味。旬は一般に春とされるが、秋も美味になる。わた焼けしやすいので、鮮度のよいものでも、冷蔵庫にしまう前にわた抜きをしたほうがよい。三枚におろし、皮をむき、細作りにして、刺身、昆布〆、すしの種、わん種などにする。加工品にみりん干しがある。

身が透き通るように美しいので、それを生かして刺身や酢の物に。
酢の物にする場合、長い時間酢につけるとせっかくの美しい身が白くなってしまうので注意する。天ぷらや、フライに。上品な味を生かして薄い味つけにする。
●三枚おろし
(1) 頭を斜めに落とし、腹を開いてわたを出す。水洗いし、水けをふき取る。
(2) 背を手前、尾を左に置き、頭の方から中骨の上に沿って、尾の方へ一気に包丁を引く。
(3) 中骨を下、腹を手前に置き、先と同様に包丁を入れておろす。
(4) 腹身をそぎ取る。
●酢洗い
酢の物に用いる方法三枚おろしにしたサヨリを、塩か塩水でややしめ、そのあと酢に30秒ほどつける。生臭みが抜け、皮もむきやすくなる。アジ、キスにも同様に。

◆骨せんべい
(1) サヨリの中骨はざるに広げ、風通しのよい所に置いて少し乾燥させる(水けがあるとカラっと揚がらない)。
(2) 揚げ油を170~175度に熱して (1) の中骨を入れ、はしで返しながらきつね色になるまで3~4分揚げる。
(3) (2)を紙に取って油をきり、塩少量をふって食べやすい大きさに折り、紙を敷いた器に盛る。サヨリのほかキス、アジ、アナゴの中骨でも同様に。ビールや酒の肴によい。


サワラ(春)

西京漬けが有名。他にも塩焼き・煮魚・ムニエルなどにも。

サバ科だが、サバより平たく細長い。ほっそりとした体形から「狭腹(サワラ)」、「狭腰(サゴシ)」、サゴチなどと呼ぶ。北海道南部まで全国の沿岸に分布し、瀬戸内海に多い。春、4~6月頃内湾に入り産卵するため、この時季に多く漁獲される。このため「鰆」の字が当てられる。流し網、刺し網、釣りでとられ、全長は1m位。この他に大型で沖合いにすむヨコシマサワラ(1m)、ウシサワラ、カマスサワラ(2m)がいる。
サワラ類には何種かあるが、美味なのはサワラ、ヨコシマサワラで、ウシサワラ、カマスサワラは味が劣る。

白身の上品な味の高級魚で旬は晩秋から初春。 
寒鰆(かんざわら)の呼び名があるほどで、この時期に特に旨い。
刺身、塩焼き、照焼き、酢締め、酒蒸し、など調理方法は色々、くせがないため西洋料理でもムニエル、グラタンホイル焼などで利用される。
5月に持つ熟卵を代用カラスミの原料として利用することがある。

サワラは、肉質が柔らかく水分が多いため、ごく鮮度のよい物でも手荒に扱うと身割れを起こす。このため、大名切りまたは大きめの切身にするほうが無難。
一塩にしたり、つけ汁にやや長めにつけて身を締めてから調理するとよい。

◆サワラのムニエル
(1) サワラの切身に塩、胡椒各少量をふって下味をつけ、水けをふいて小麦沿を薄くまぶす。
(2) フライパンでバター、サラダ油を熱し、(1)を皮のほうから入れて、両面焼き色がつくように焼く。
(3) 別のフライパンでバターを熱し、粒マスタード、生クリームなどを加えて、少し煮詰め、塩と胡椒で味を調える。
(4) 器にサワラを盛って(3)の粒マスタードソースをかける。


シマアジ(春)

主に太平洋側で水揚げがある。刺身が美味く2Kg前後のものが脂の乗りが最高。

アジ類の特徴ともいえるぜんごと呼ばれる硬いとげが尾柄部分だけにある。体高が高く、体側の中央を1本の金色の線がある。全長1mに達する。
暖流(黒潮)にのって本州中部以南や八丈島方面で、特に漁獲が多い。養殖も盛んで、南紀白浜、瀬戸内海、九州が主な産地。アジ類の中でもとくに、シマアジは味、値段とも抜群。 旬は春から初夏。

アジ類の中でもとくに、シマアジは味、値段とも抜群。
旬は春から初夏。脂の濃い旨みのある魚で、鮮度のよい物は、まず刺身、すし種にして味わうのが最高。刺身、すし種用には、2キロ前後ものが最適で、これ以上大きくなると脂が濃すぎてくどくなるため、塩焼き、つけ焼きなどにする。

◆下ごしらえの方法
まず「ぜんご」を取る。尾の付け根に包丁を寝かせ入れ上下に小刻みに動かしながら取る。その際、身は削らないよう注意を払う。
三枚に卸すには、最初に頭を取る。頭を左、尾を右に置き、胸びれの付け根から包丁を立てて、やや斜めに入れ裏返し反対側も同様に包丁を入れ、胸びれが頭に付いている状態ではずす。
腹を裂き、中をきれいに水洗いしたら腹身の部分(肛門付近)から中骨に沿って包丁を引き、同様に背身も包丁を入れ片身を外す。同様に中骨にあまり身を付けないよう注意を払いながら残りの片身も外す。


シャコ(春)

姿は悪いが、味は一級です。わさび醤油、白味噌酢で召し上がれ。

エビに似ているが、口脚(コウキャク)目シャコ科で別の仲間。生きているうちは青みを帯びた薄茶色、茹でると褐色になる。各地沿岸の泥底に穴を掘ってすみ、夜になると出歩く。小型の魚類で甲殼類を捕食する。
新潟では、ほとんどが底引き網漁でとられ、生の状態で出荷される。手軽に食べるには茹でて食べるのが一般的だが、とげのある殻は手では簡単に剥けないので、調理バサミを使い丁寧に身を殻から外して食べる。旬は腹に卵のある春から初夏にかけて。

特に子持ちの卵はコリコリとした歯ごたえと独特の甘味があり美味である。

◆茹で方
なるべくイキの良いうちに茹でる。大鍋にシャコがすっぽりかくれるくらいの水を張り、水からゆでる。シャコ20尾に対して塩小さじ2杯ほど入れ、沸騰してから15分ほどゆで、ザルに上げ冷ます。完全に冷めてから殻をむく(冷めないうちに殻をむくと身離れが悪く身を壊しやすい)また、調理ばさみで縁の剣を切り捨て、殼ごと味噌汁にしても出汁が出てなかなか旨い。
むきみを天ぷらなどにしても良い。


シラウオ(春)

活魚のおどり食いが有名です。また、卵とじやわん種、賛沢な白魚鍋に。

全国沿岸に分布。体は半透明で細長く、脂びれがある。サケ・マス近縁の魚。2~5月に川へさかのぼり、砂底に産卵し、1年で全長約10cmになる。年々、水質汚染などで漁獲量は減少して全国で水揚げされる量も1,000トン足らず。
昔ながらの漁法は各地にあるが今は動力の引き網や刺し網などで獲る。産卵の為に河口によって来るところを捕獲する。 「シロウオ」はハセ科の魚で完全な別種。

旬は冬から春にかけて。体全体が白色透明で、活魚はおどり食いにもする。淡泊で上品な味と美しい姿を生かし、わん種、卵とじ、すし種、から揚げ、天ぷら、あるいは佃煮などにする。

◆卵と大変相性がよいので、薄味で煮て卵とじにすると美味。
まず、シラウオはざるに並べ、薄塩を振ってしばらくおく。
塩が回ったら塩少々を加えた熱湯に入れる。
魚が白くなったらすぐに引き上げ冷水にさらしてさまし、水きりをする。
薄味の煮汁を煮立て、ゆでたシラウオを並べる。
再び煮立ったら三つ葉の軸を切ったものを散らし溶き卵を流し入れる。
箸で数ヵ所を突っつくようにして全体に卵をゆきわたらせ、蓋をして1~2分煮て火を止める。
そのままむらして半熟状に固め、木の芽をあしらい器に盛る。


ツブ貝(バイ貝)(春)

酒蒸しや味噌汁でどうぞ。おなじみ近似種のムラサキ貝より殻が固く、身はやや大きめ。

北海道南部からシナ海に分布。5~20?の浅海の砂底にすみ、肉食性。6~8月に産卵する。
バイ(黒バイ)は漁獲量が少なく、味も良いので単価も高く取引される。新潟では水深100~200mに棲む白バイ(つばい)をバイ貝と呼ぶ。
また近縁種に日本海の水深200~500?の砂泥底にすむエッチュウバイがある。高さ12cm、径7cm位で、市場ではシロツブと呼ばれる。ネジボラ、シライトマキもバイと混称する。

小粒のものは殻つきのまま塩茹でにして楊枝で引き出して食べる。酒の風昧とよく合うので、酒をふりかけて酒蒸しにも。蒸したものをそのまま食べるのも磯の香りがしてよいが、甘味の少ない酢醤油や、からしのきいた酢味噌で食べるのもおいしい。大粒なら肉を刻み、酢の物、あえ物などに。また、若い人にはマヨネーズを添えるのもよい。
近縁種のエッチュウバイが、バイ中もっとも美味とされている。このエッチュウバイは白色のバイで、調理法はバイと同様である。


ナマコ(春)

刺身で三杯酢、なかなかの珍味。有名な腸の塩辛「このわた」と卵巣の「このこ」は超珍味。

日本各地の沿岸にすみ、全長20~30センチに達する。
寒くなると、新潟でもクロナマコやアカナマコが取れ始める。ナマコは体色によって区別され、アカナマコ、クロナマコ、アオナマコなどの種類がある。関西ではアカナマコが美味とされ、市場でもクロやアオナマコより高値がつく。旬は晩秋から翌年2月頃まで。

こりこりした歯ごたえのある肉だが、水分は90%以上で、主成分のタンパク質も4%にもならず、質的にひじょうに特殊なものである。このため、栄養価はほとんど期待できず、どちらかといえば、三杯酢などで弾力ある食感を楽しむ嗜好(しこう)品である。
こりこりした歯ざわりが身上だけに、いきの良いものを選ぶことが大切。いぼが隆起し、肉質が締まっているものが上物。表皮が溶けかかっているものや、いぼがくずれているものは鮮度が落ちている。
「このこ」とは、ナマコの卵巣のことで、オレンジ色をした細い糸状の集まり。これをよく洗い、三味線のバチのような形にまとめて日陰干ししたものを「くちこ」という。寒風で干す能登産が有名。また、腸管の塩辛を「このわた」といい、好酒家が酒の肴として珍重する。「からすみ」(ボラの卵巣)、「うるか」(アユの卵巣)とともに天下の三珍といわれている。

かならず生きているものを使うこと。 磯の香りが強いので、大根おろしといっしょにだいだいの汁を入れた三杯酢であえる。 手の脂肪がつくと表面がとろけて早くいたむので、なるべく早く調理して三杯酢に浸してしまうとよい。
◆下ごしらえ
(1) 両端を落とし、腹(さわって柔らかいところ)を切り開く。
(2) 切り目からわた(このわた)を取り出す。
(3) 腹の内膜を布巾でこすり取る。
(4) まな板の上のナマコにたっぷりの塩をふり、ざるをかぶせ、ぬめりが取れ、身がしまってくるまでざるを左右にふる。 (5) 水洗いする。
(6) 小口からごく薄切りにする。
(7) 三杯酢(酢大さじ1、砂糖大さじ1/2、塩少量、醤油小さじ1)三杯酢に漬け出来あがり。


ニシン(春)

子持ちの塩焼きが最高。殆どが身欠ニシン・数の子などの加工品へ。

寒帯性の回遊魚で北太平洋域に分布。北海道の岸に、春告魚と呼ばれるニシンが、4~5月に群来したのは過去のこと。以前は、東北、北陸以北でよく獲れ、大衆魚の代表格でもあったが、現在はわずかしかとれず、ほとんどが輸入に頼っている。幼魚はイワシと区別がつかないほど似ているため、東北ではカドイワシ、カド(アイヌ語)とも呼ぶ。全長は35cm位に達する。
数の子は、1腹で3~10万、(一説では 年齢×約一万個)平均5万粒の卵が詰まっている。「数の子」は、カドの子がなまってカズノコになったらしい。

旬は春。卵が完熟する前の沖獲りニシンが脂ものり美味。
新鮮なものは一匹のまま塩焼きにするのが一番、身が柔らかいので、扱いに注意。

半乾きにした身欠きニシンは生と違って扱いやすく、風味も出て美味い。
そのまま焼いて、醤油だけで食べてもよいが、煮つけもよし、味つけはやや濃いめに甘辛く仕上げる、煮たものを香ばしく焼いてもよい。

◆身欠ニシンの甘露煮 
(1) 身欠ニシンはうろこ、頭、尾を除いて2~4つに切り、米のとぎ汁で柔らかくなるまで煮る。
(2) 水に番茶を入れて1~2分煮立て、こす。
(3) 平なべに(1)と(2)を入れて強火にかけ、煮立ったら火を弱めて、浮いてくるアクをすくいながら約40分くらい煮る。
(4) 別鍋で、だし、酒、醤油、砂糖、生姜のせん切りを入れ、落としぶたをして(3)で煮上がったニシンを1時間くらい煮る。熱いうちは身が崩れ易いので冷ましてから器に移す。


ヒイカ(春)

身が薄く、歯ごたえのあるイカです。甘辛く佃煮風にして召し上がれ。


ホウボウ(春)

身離れがよく食べやすい魚で、豆腐の鍋物やブイヤベースにお使い下さい。

北海道以南の日本各地に分布。水深100m前後の砂泥底に棲む。水からあげられると浮き袋を使ってボーッボーッと大きな声を出すのでこの名がついた。近似種の小型でうろこの大きいカナガシラとよく間違えられるが、ホウボウの方が鱗が細かい(手で触れてざらざらする方がカナガシラ)。
ホウボウ類と近縁のカナガシラ類は種類が多く、味もいろいろあるが、ホウボウがもっとも美味とされる。

味は淡白でくせがなく、鮮度のよいものは刺身・姿造りに。他、塩焼き・煮つけ・わん種・から揚げなど、利用範囲の広い魚である。旬は12~4月。おもに底引き網で通年とられる。


ホタルイカ・真イカ(春~夏)

熱湯を通してから、わさび醤油や三杯酢でお召し上がり下さい。

足が10本あり頭部と直結、内2本は長く伸縮自在。
アカイカ科(スルメイカ)、ジンドウイカ科(ヤリイカ)、コウイカ科、ツメイカ科(2mに達するニュウドウイカ)、ホタルイカモドキ科(ホタルイカ)、テカギイカ科(ドスイカ)などがある。

スルメイカ…各地沿岸に見られ、夏に北上、冬に南下する。胴長30cm位になり、昼夜での深浅移動を行なう。
ヤリイカ…全国に分布。春から夏にかけ産卵のため浅所にくるのを釣る。胴は名のとおり「槍」のように細長く、40cmに達する。 コウイカ…20cm弱で、扁平な胴部の中に、白い甲を持つ。全国に分布、大群での回遊はしない。スミイカ、マイカとも。
アオリイカ…胴長25cm位。本州以南に分布、春に産卵する。 ホタルイカ…深海性で発光器を持つ。小型で、日本周辺にすむ。漁獲は富山湾・相模湾で多く、初夏に産卵する。

煮すぎると硬くなるので、さっと火を通す程度にするとよい。
イカは水分が多く、煮ると煮汁に水分が出てしまうので、イカに火が通ったら、イカはいったん取り出し、煮汁を少し煮詰め、ここに取り出しておいたイカをもどし人れて煮汁をからませるとよい。酒と相性がよく、煮つけの調味には欠かせない。
産地の市場・魚屋では、まだが生きている新鮮なもの出回る。刺身には最適な肉質。
アオリイカ、ヤリイカ、コウイカ、スルメイカの順に美味。また、ホタルイカは丸ごと内臓も一緒に刺身で食ベる。
旬は、ヤリイカ、コウイカが春、アオリイカ、スルメイカが夏とされている。

◆皮のむき方
(1) 胴内の軟骨のところに指を入れて足のつけ根をはがし、わたとともに足を引き抜く。わたとすみ袋を破らぬよう注意。
(2) 胴とえんぺらの間を指で少しはがし、ここを起点にえんぺらをつかんで足の方向に引っぱり、えんぺらをはがす。イ力はすべりやすく、力が入れにくいので、指に塩をつけて扱うとよい。
(3) えんぺらをはがしたあとの皮の切れ目から、皮をぐるりとむき取る。外皮の下に多少の繊維があるので、これも一緒にむく。特に刺し身用は、残った繊維を竹串でていねいに除く。

◆イカの塩辛の作り方
(1) イカの身150gを細く切る。足を使うときは食べやすく切る。塩小さじ2(イカの7%)の半量を加えてはしで混ぜ、ざるにのせて水けをきる。
(2) イカのわた2はい分(150g)は、すみ袋を除き、中身をしごき出す。
(3) 残りの塩を加えて、はしでよくかき混ぜ、(1) を加え混ぜる。
(4) ボールにラップをして冷蔵庫に入れ、1日に3~4回かき混ぜる。5~7日で食べごろになる。 ※ボールなどの器具は清潔なものを用い、調理中にかき混ぜる時もはしを使う。手で混ぜると雑菌が繁殖することがある。


マス(春)

タンパク質が豊富な魚で、しょうゆ味やバターソースがよく合います。。


マダイ(タイ)(春)

貫禄のある代表的なタイです。素材を生かして姿焼、かぶと煮や鯛飯に。

タイ科の魚の総称。
タイの中でも特に真ダイは海産魚の王と称され日本人に愛好される。クセのない白身で刺身、霜降り、昆布締めにすると美味。頭は骨蒸し、カブト揚げ、潮汁にして食する。幼魚はカスゴ、タイ子などと呼ばれ絶好のすし種。日本産のタイ科の魚は、マダイ、チダイ、クロダイ、キチヌ、キダイ、ヘダイ、ヒレコダイの7種。

真ダイ…タイ類で最大。タイ中もっとも大きくなり1mを超すものもあるが旨いのは50cm止まりの2~3kgもの。霜降りにするなら1~2kgがよい(あまり大きいものは皮が固くなる)最近は養殖のタイも市場に多く出回っているが、脂が多く、表面の色が若干黒ずんでいる。
チダイ…マダイと似ているが、小型でえらぶたの縁に赤い線がある。100g以下をカスゴと呼び、産卵期は10~12月。
キダイ…体色が黄色がかっていてこの名がある。以西底引き綱でとられ、市場ではレンコダイの名で取り引きされる。
クロダイ…沿岸性で内湾に多く、河口にも入る。チヌともいい、釣りの好対象。南日本に近縁のキチヌが分布する。

「腐つてもタイ」という言葉は、タイ類の身は鮮度が低下しても味が落ちないため。旬はマダイが冬から春、チダイが夏。産卵直後でマダイの味が落ちる夏にチダイが美味となるので、値段もマダイより高くなる。クロダイの旬は夏。

◆タイの頭のおろし方
(1) 頭を立て、下あごを向こう側に置いて口先から包丁を入れ、切りおろす。
(2) 目と口の間に包丁の刃先を入れて、包丁をまっすぐにおろす。
(3) 裏返して、今度は包丁の刃元で切る。左手で包丁の背を強くたたくとよい。
(4) でき上がり。手前の部分(かまの所)には肉がついていないので除く。

◆タイの頭の潮汁
(1) タイの頭を適当な大きさに切り、塩少量をふってザルにのせ、30分おく。これをたっぷりの湯で1分ゆで、すぐ冷水に取ってうろこなどをていねいに洗う。
(2) 鍋に水、昆布、(1) を入れて強火にかけ、煮立ったら火を弱めてていねいにアクを取り、蓋をしないで15~20分煮る。昆布を取り出して、酒、塩、醤油各少量で調味する。 
3) 腕に盛り、よりうどと木の芽をあしらう。


メゴチ(春)

身はあっさりで締まっています。椀種・天ぷらは最高。

北海道から本州沿岸に分布。
標準和名ネズミゴチ。ネヅッポ科ではもっとも普通の種類。コチよりハゼに近い魚で、メゴチは東京湾付近の呼び名。新潟沿岸では底引網でとれる。春から夏にかけて産卵し全長20cm位。ヤリヌメリ、トビヌメリ、ネズッポなどもメゴチと混称される。なお、標準和名メゴチという魚があるが、これはコチ科で別種。

昔から"天ぷら魚"とまで呼ばれるだけあり、「松葉おろし」にして天ぷらにすると、特有の風味が出て、最高に美味。淡泊な味で、舌の上でとろけるように柔らかい。
塩、こしょう、またはガーリックパウダーで下味をつけてフライや南蛮漬けなども美味。

ヌメリが多くて扱いにくい場合は、塩をふって振り洗いする。
また、鮮度が落ちると皮がむきにくいので、そのままおろしても良い。

◆松葉おろし
(1) 背びれを尾のほうからそぎ取り、腹の皮を残して頭のつけ根に包丁を入れる。
(2)裏返して尾を左に向け身を包丁で押さえて頭を尾側に引っぱって皮をむく。
(3)ワタを出して水洗いし、水気をふく。中骨に沿って尾のつけ根まで包丁を入れる。
(4)中骨を下にし、(3)と同様に包丁を入れ、中骨だけ切り取る。身は松葉形になる。


メバル(春)

身はもろいが味はよく、塩焼き、わん種、味醂干などにお奨めします。

メバルは北海道小樽以南から九州まで広く沿岸に分布。胎生で冬に数万の仔魚を産む。体色は灰褐色、灰赤色、黒灰色で体側に不鮮明な5~6条の黒い横じまがある。ごく近縁のトゴットメバルは中部以南に分布しやや深い所にすむ。しまがやや淡色なのはウスメバル、北に多い。すむ場所や深さによって体色が異なるので、クロメバル、アカメバル、シロメバル・キンメバルなどと釣り人や鮮魚市場では分けられるが、どれも同種のメバル。魚屋では区別せず、みなメバル。旬は晩春から夏。

新鮮なものは薄切りにして刺身にするが、いずれも惣菜用に煮つけ・塩焼き、鍋などにしても良い。砂糖や味醂をやや利かせ、つやよくこってりと煮付ける。濃厚な味とよく合う魚なので、から揚げにし、甘酢あんをからませても美味い。

◆メバルの煮つけ
(1)メバルは、うろこ、えら、わたをとり、背びれもとってきれいに洗い、背側の身の厚い部分に斜めに切れ目を入れる。
(2)水と、酒、醤油、砂糖、みりんを合わせて煮立て、魚を入れ、落としぶたをして中火で20分位煮る。途中ときどき、煮汁をスプーンですくってかける。
(3)器に盛って煮汁をかける。


ワタリガニ(春)

程よい甘みがおいしく、蒸し物や天ぷらに。またカニミソもご賞味下さい。

エビ、ヤドカリ同様、頭胸部と腹部からなる。
腹部は萎縮(いしゅく)し、頭胸部の腹面に折れ曲がり、雌のほうが幅が広い。
胸脚は5対、第1胸脚ははさみ。寒帯から熱帯、陸から深海まで多種が分布。
日本特産のタカアシガニは、はさみを広げると3m、甲も40cmで世界最大。
有用種も多く、底引き綱、籠、刺し網などでとる。
タラバガニ…ヤドカリの仲間で、はさみを入れて脚が4対しかない。北太平洋一帯に分布。甲長は雄20cm、雌16cm程。
ズワイガニ…島根県以北の日本海、40~300mの海にすむ。松葉ガニ、越前ガニともいい、底引き網でとられる。
ケガニ…各脚の背面横、後縁に毛がある。北海道、日本海各地の30~60mの海にすむ。甲長12cm程で、籠漁業でとる。
ガザミ…広く移動するのでワタリガニともいう。 津軽海峡以南の内湾に多く、4~10月に産卵。底引き網、刺し網でとる。

カニ類はもっとも美味な水産物の一つ。なかでも冬のズワイガニは最高の美味とされる。 その他のカニ類も成分の含量の差や、その他のエキス成分の影響により、各種特有の味がかもし出される。
肉質は脂質含量が低いが、卵巣の栄養価はきわめて高い。旬はいずれも秋から冬。

生きているものをゆでるときは、水から入れて強火で15~20分ゆでる。ゆで汁は塩、また時には醤油を入れて、落としぶたをしてゆでる。
あっさりとそのまま二杯酢で食べたり、キュウリなどといっしょに酢の物に。洋風にはマヨネーズであえてサラダにすると持ち味が生きる。甲羅に酒を入れて飲むのも楽しい。


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